アジア大会スカッシュで日本選手が香港選手を押した?炎上動画はどっちが悪い?レット・ストロークのルールを調査

アジア大会2026

2026年愛知・名古屋アジア大会のスカッシュで撮影されたとされる映像が、SNSで議論を呼んでいます。

話題になっているのは、

日本選手がプレー中に香港選手を手で押すように見える場面。

SNSでは、

「日本選手が体当たりした」

「香港選手が進路を塞いでいた」

「スカッシュでは相手が邪魔なら押していいの?」

「止まってレットを要求すべきだった」

など、さまざまな意見が出ています。

さらに、

「香港選手が先にルール違反をしたのだから日本選手は悪くない」

という意見がある一方、

「相手が邪魔でも押してはいけない」

という指摘もあります。

では実際のスカッシュのルールでは、どのように規定されているのでしょうか。

世界スカッシュの公式競技規則を確認すると、この問題は、

「どちらが悪いのか?」

という単純な二択では説明できないことが分かりました。

ポイントになるのが、

インターフェアランス(妨害)

レット(やり直し)

ストローク(得点)

コンダクト(行為規範)

という4つのルールです。

詳しく見ていきましょう。

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アジア大会スカッシュで何が起きた?

今回SNSで拡散している映像は、2026年愛知・名古屋アジア大会の男子スカッシュ団体戦、

日本対香港

に関連する映像とみられます。

日本スカッシュ協会によると、日本男子は団体戦プールマッチで香港と対戦しました。

試合は3試合。

林尚輝選手がMatthew Lai選手に3-2で勝利。

机龍之介選手がAlex Lau選手に1-3で敗戦。

最後に遠藤共峻選手がHenry Leung選手に0-3で敗れました。

団体戦の結果は、

日本1-2香港。

香港が勝利しています。

ただし注意したい点があります。

2026年9月30日現在、日本スカッシュ協会や香港スカッシュ協会の公式試合レポートでは、

SNSで問題になっている接触場面についての詳しい説明や処分は確認できません。

そのため本記事では、SNS映像だけから当該選手を断定することは避け、

映像で問題になっているプレーを公式ルールに当てはめるとどうなるのか

を中心に検証します。

そもそもスカッシュはなぜ選手同士がぶつかる?

スカッシュをあまり見たことがない人には、

「なぜ相手と同じ場所を走っているの?」

と不思議に見えるかもしれません。

スカッシュは四方を壁に囲まれたコートで、2人の選手が同じスペースに入り、前方の壁へ交互にボールを打つスポーツです。

テニスやバドミントンのように、

ネットを挟んで相手と分かれていません。

そのため、

打った選手
↓
次に打つ選手

が同じコート内ですれ違います。

つまり、

選手同士の進路が交差すること自体が競技の特徴

なのです。

だからこそ、スカッシュには「相手の進路を空ける」という特殊なルールがあります。

打った選手には「相手の邪魔をしない義務」がある

世界スカッシュの公式ルール「Rule 8 INTERFERENCE」では、ボールを打った選手は合理的なフォロースルーを終えた後、

相手の邪魔にならないよう、あらゆる努力をしてスペースを空けなければならない

と定めています。

具体的には次の4点です。

相手がボールを十分に見られること。

相手がボールへアクセスできること。

相手が合理的にラケットを振れるスペースがあること。

相手が前壁のどの部分へもボールを打てること。

これらを確保するために、打ち終わった選手は退かなければなりません。

「直線コースを完全に空ける」は少し違う

ここで、SNSで広がっている説明を一つ修正する必要があります。

今回の投稿では、

「相手がボールへ向かう直線的な進路を完全に空けなければならない絶対的な義務」

という趣旨の説明があります。

しかし現行の公式ルールの表現は、そこまで単純ではありません。

ルールが求めているのは、

「every effort to clear=スペースを空けるために最大限努力すること」

です。

つまり、

「相手の進路に一瞬でも身体が入ったら即反則」

ではありません。

スカッシュでは狭いコートで双方が高速移動するため、完全に接触をなくすことは現実的ではありません。

だから審判は、

妨害があったか

だけではなく、

妨害した選手が避ける努力をしていたか

まで見ます。

妨害されたらどうする?

では、ボールへ向かおうとしたところに相手がいた場合はどうするのでしょうか。

ここで登場するのが、

LET(レット)

です。

公式ルール8.2では、ストライカーが妨害を受けたと考えた場合、

プレーを止めて「Let, please」と要求できる

と規定されています。

つまり、

「邪魔だ!」

と思って相手を押しのけるのではなく、

プレーを安全に止めて審判へ判断を求める

仕組みになっています。

レットとは?

レットとは簡単にいうと、

そのラリーをやり直すこと。

どちらにもポイントは入りません。

同じサーバーからもう一度ラリーを行います。

しかし、

「邪魔された=必ずレット」

でもありません。

審判の判断によって、

ノーレット

レット

ストローク

の3種類に分かれます。

ここがスカッシュを見るうえで非常に重要です。

①ノーレットとは?

まず、

NO LET(ノーレット)。

これは、

「やり直しを認めない」

という判定です。

たとえば多少の接触や妨害があったとしても、

「それでも十分ボールへ到達できた」

と審判が判断した場合。

公式ルールではこれを、

minimal interference=最小限の妨害

としてノーレットにできます。

また、妨害がなくてもそもそもボールへ追いつけなかったと判断された場合もノーレットです。

②レットとは?

次が、

LET。

相手がスペースを空けようと十分努力していた。

しかし結果として妨害が起こった。

そして妨害された側が、妨害さえなければ正常に返球できた。

このような場合、

ラリーをやり直します。

つまり双方にポイントは入りません。

③ストロークとは?

そして最も重要なのが、

STROKE(ストローク)。

これは妨害された側へ、

そのラリーの勝利=1ポイント

を与える判定です。

公式ルールでは、

妨害された選手が正常に返球できたはずで、

なおかつ相手が妨害を避けるための十分な努力をしていなかった場合、

ストローク

となります。

さらに、

「妨害がなければウイニングショットになっていた」

と判断された場合にもストロークが与えられます。

「止まれば日本の1点」は断定できない

ここで今回のSNS投稿について、非常に重要な点があります。

投稿では、

「止まってアピールしていれば自動的に日本の得点になった可能性が極めて高い」

という趣旨の説明があります。

しかし映像だけから、

「確実にストロークだった」

と断定することはできません。

審判は、

妨害が実際にあったか。

妨害された側はボールへ到達できたか。

相手は避けようとしていたか。

妨害は最小限だったか。

正常な返球ができたか。

ウイニングショットを打てる状況だったか。

などを総合して判断します。

したがって、

止まれば必ず1点

ではありません。

考えられる判定は、

ノーレット・レット・ストローク

のいずれかです。

では相手を押して突破するのは?

ここについて公式ルールはかなり明確です。

Rule 8.8.1には非常に重要な注記があります。

ボールへ到達するために「every effort=あらゆる努力」をする必要はありますが、

その努力に相手との接触は含まれない

とされています。

さらに、

回避できる接触が発生した場合はRule 14のConductを適用する

と明記されています。

つまり、

「ボールを絶対に拾わなければ!」

と思ったとしても、

相手を押しのけてまでボールへ行くことは、ルールが求める“努力”ではない

のです。

公式ルールに「PUSHING」と書いてある

さらに決定的なのが、

Rule 14 CONDUCT。

選手は、

不公平
危険
攻撃的
侮辱的
競技に有害

な行為をしてはいけないと定められています。

そして「unacceptable behaviour=許容できない行為」の具体例として、

unnecessary physical contact, which includes pushing off the opponent

と明記されています。

つまり、

「不必要な身体接触。相手を押す行為を含む」

です。

「押す」という行為そのものが、公式ルールに具体例として登場しています。

相手が邪魔でも押していいことにはならない

ここが今回の問題で最も大切なポイントでしょう。

仮に香港選手によるインターフェアランスが成立する状況だったとしても、

それによって相手を押す権利が発生するわけではありません。

この2つは別々のルールで判断します。

香港選手側については、

Rule 8=Interference

の問題。

押した側については、

Rule 14=Conduct

の問題。

「先に相手が邪魔したから押していい」

というルールにはなっていません。

では正解は「止まる」?

安全面からいえば、

相手との回避可能な接触を避け、プレーを止めてレットを要求する

のがルールに沿った対応です。

しかも公式ルールは、

安全を最優先する

ことを大原則として掲げています。

スカッシュは狭いコートで高速のボールとラケットを扱います。

無理に相手を突破しようとすれば、

転倒
衝突
ラケットによる負傷

などにつながる危険があります。

そのため「レット」という仕組みが用意されているのです。

ただし「必ず止まらなければならない」でもない

ここにも少し注意が必要です。

わずかな接触しかなく、

普通にボールを追えるのであれば、

プレーを続けても構いません。

実際、ルールには「minimal interference」という考え方があります。

問題なのは、

相手を押さなければボールへ行けないほど進路が塞がれているのに、力ずくで突破しようとすること。

そこまでの妨害なら、安全のためプレーを止めて審判へ判断を求めることが重要になります。

押したら即失格なの?

では、

「押したら即失格?」

というと、これも違います。

Rule 14では、行為の程度に応じて、

Conduct Warning

Conduct Stroke

Conduct Game

Conduct Match

という処分があります。

つまり、

警告
相手に1ポイント
ゲームを相手に与える
試合そのものを相手に与える

と段階があります。

どの処分になるかは、

行為の深刻さ

によって審判が判断します。

今回どんな処分が出た?

ここについては慎重に見る必要があります。

2026年9月30日現在、日本スカッシュ協会と香港スカッシュ協会が公開している日本対香港の試合レポートでは、

問題となった接触についての懲戒処分の詳細は確認できません。

したがって、

「日本選手がこの行為で失格になった」

「警告を受けた」

などと現時点で断定することはできません。

確認できる公式結果は、

香港が日本を2-1で破った

というところまでです。

「香港選手が明確なルール違反」も慎重に

反対に、

「香港選手が明らかにルール違反をしていた」

という断定にも注意が必要です。

確かに公式ルールでは、打った選手には相手のためにスペースを空ける義務があります。

しかし求められているのは、

「あらゆる努力をして退くこと」。

相手の進路に身体が残っただけで、自動的に反則となるわけではありません。

審判は、

本当に妨害だったのか
避ける努力をしていたのか
相手はボールへ到達できたのか

などを見て判断します。

したがって動画だけを見て、

香港選手が意図的に進路妨害した

とまで断定するのも適切ではありません。

「どっちが悪い?」という問いが難しい理由

ここまで整理すると、

「日本と香港、どちらが悪い?」

という問いそのものが少しずれていることが分かります。

一つのラリーの中でも、

①インターフェアランスの判断

と、

②選手のコンダクトの判断

は別だからです。

仮に相手が十分にスペースを空けていなかったとしても、

それとは別に、

押すという行為がConductの対象になる可能性があります。

逆に押されたからといって、その前にインターフェアランスが存在しなかったことになるわけでもありません。

両方を別々に評価する必要があります。

スカッシュは「矛盾したスポーツ」なの?

今回のSNS投稿ではさらに、

「相手が取れない球を打つスポーツなのに、その相手が取れるよう道を空けなければならないのは矛盾ではないか」

という興味深い問題提起もされています。

確かに初めてスカッシュを見ると、

「良いところへ打ったのに、なぜ相手のために避けなければならないの?」

と思うかもしれません。

しかし、これは必ずしも競技規則の「矛盾」ではありません。

「難しい球を打つ」と「身体で邪魔する」は別

スカッシュで相手を追い込む方法は、

ボールです。

速いボールを打つ。

壁際へ正確に打つ。

前後へ揺さぶる。

相手から遠い場所へ落とす。

そうして、

相手が返せないショットを作る。

一方、

自分の身体を障害物として使って返球を困難にする

ことは別です。

競技が評価するのは、

「ショットによって相手を追い込んだか」

であって、

「身体で相手の道を塞いだか」

ではありません。

なぜこんな複雑なルールになった?

理由はスカッシュ特有のコート構造にあります。

テニスならネットがあります。

卓球にもネットがあります。

バドミントンにもネットがあります。

相手選手は基本的に反対側にいます。

しかしスカッシュは、

2人が同じ空間を走ります。

しかも交互に同じ前壁へ向かってボールを打ちます。

必然的に、

前の打者が次の打者の進路に入る

ことがあります。

その問題を解決するために、

レット
ストローク
ノーレット

という独特のシステムが発達したわけです。

実は「ルールの欠陥」より競技の核心

その意味では、

インターフェアランスはスカッシュの欠陥というより、競技そのものが抱える核心的な判定

と見る方が適切でしょう。

サッカーなら、

ハンド
オフサイド
ファウル

の境界線。

野球なら、

ストライク・ボール。

バスケットボールなら、

ブロッキングとチャージング。

スカッシュでは、

レット・ストローク・ノーレット

の判断が非常に重要になります。

そしてトップレベルになるほど選手の動きが速いため、難しい判定が生まれます。

ロサンゼルス五輪で初採用

このスカッシュは、

2028年ロサンゼルスオリンピック

で初めて正式競技になります。

そのため今回の愛知・名古屋アジア大会は、日本でスカッシュを初めて本格的に見る人にとっても大きな機会となっています。

アジア大会では1998年バンコク大会から正式競技。

2010年から団体戦。

2022年杭州大会から混合ダブルスも行われています。

今回の炎上をきっかけに、

「なぜ選手が相手と同じコートにいるのか」

「なぜ邪魔されたらプレーを止めるのか」

という、スカッシュ独特のルールが注目されることになりました。

日本対香港はどんな試合だった?

今回の男子団体・日本対香港は、もともとメダル獲得を左右する重要な一戦でした。

第1試合では林尚輝選手がMatthew Lai選手と長いラリーを繰り広げ、フルゲームの末に3-2で勝利。

続く机龍之介選手は香港のAlex Lau選手と対戦。

1ゲームを奪ったものの1-3で敗れます。

1-1。

勝負は第3試合へ。

遠藤共峻選手がHenry Leung選手と戦いましたが、0-3で敗戦。

日本は、

1-2

で香港に敗れました。

日本スカッシュ協会は、

「非常に惜しい勝負だったが、相手の方が少しだけ上回った」

と総括しています。

実は香港はアジア屈指の強豪

香港はスカッシュの強豪です。

今大会でも混合ダブルスでは、

香港同士による決勝

を実現。

Lee Ka-yi/Tang Ming-hong組が金メダル、Tse Yee-lam/Matthew Lai組が銀メダルとなり、

金銀独占

を果たしています。

日本男子にとって香港戦は、アジアトップレベルを相手にした厳しい戦いだったわけです。

今回の炎上をルールで整理すると?

今回の映像について、現時点で確認できるルールから整理すると、

まず、

打球後の選手には相手のためにスペースを空ける努力をする義務があります。

もし十分に退かず相手の返球を妨げたのであれば、

インターフェアランスとして、

レットまたはストローク

となる可能性があります。

しかし、

「邪魔だった=自動的に相手の1点」

ではありません。

そしてボールを追う選手も、

相手を押しのけて進むことはルール上認められていません。

回避可能な接触についてはConductの対象となり得て、公式ルールは「相手を押すこと」を不適切な身体接触の具体例として挙げています。

つまり「相手が邪魔なら押していい」は間違い

今回の問題を最も簡単にまとめるなら、

相手が邪魔だったとしても、押して突破するのがスカッシュのルールではない

ということになります。

妨害されたと思ったら、

安全に止まってレットを要求する。

そして、

ノーレットなのか。

レットなのか。

ストロークなのか。

それを判断するのは、

審判です。

選手自身が身体を使って相手を排除する仕組みにはなっていません。

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まとめ

2026年愛知・名古屋アジア大会のスカッシュ男子団体、日本対香港戦に関連するとみられる映像がSNSで議論を呼んでいます。

問題になったのは、

日本選手が香港選手を押すように見える場面。

しかし公式ルールを確認すると、この問題は、

「香港が邪魔した」

「日本が押した」

のどちらか一方だけで説明することはできません。

世界スカッシュの公式ルールでは、打った選手には、

相手がボールへアクセスできるようスペースを空ける努力をする義務

があります。

一方、ボールを追う選手についても、

相手との接触はボールへ到達するための“努力”には含まれない

と明記されています。

さらにConductの規定では、

相手を押すこと

が不必要な身体接触の具体例として明記されています。

したがって、

「香港選手が邪魔だったのだから押しても仕方ない」

という説明は、ルール上そのまま成立しません。

一方、

「香港選手が進路にいたから自動的に日本の得点だった」

という説明も正確ではありません。

妨害の程度や両選手の動きによって、

ノーレット

レット

ストローク

のいずれになるかを審判が判断します。

今回の場面について公式な詳細説明が出ていない以上、

映像だけから「本来は日本の1点だった」と断定することもできません。

そして「相手が取れない球を打つのに、相手のために道を空けるのは矛盾」という疑問についても、

ボールで相手を追い込むことと、身体で相手を妨害することは別

と考えると理解しやすくなります。

2人が同じ狭いコートを共有するスカッシュだからこそ、

「攻撃」と「安全」を両立させるために生まれたのが、

インターフェアランス、レット、ストローク

という独特のルールなのです。

そして2028年ロサンゼルス五輪では、スカッシュが初めてオリンピック競技になります。

今回の炎上は残念な形で注目を集めましたが、

「スカッシュではなぜ相手を避けるのか?」

という競技の核心を知るきっかけにもなったといえるかもしれません。

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