2026年9月20日に行われた愛知・名古屋アジア大会の男子バスケットボール決勝。
日本代表は韓国代表に57-67で敗れ、銀メダルとなりました。
日本にとっては1962年ジャカルタ大会以来、実に64年ぶりとなる銀メダル。
若手主体のメンバーで決勝まで勝ち上がったことにも注目が集まりました。
ところが試合終了後、別の意味で話題になっているのが映画評論家の町山智浩氏のXへの投稿です。
町山氏は韓国ユーザーが投稿した試合中の動画を引用し、
「アジア大会バスケ、日本はありとあらゆる汚い手段を使って妨害しただけじゃなくて、試合中もここまでやって負けたのか。中韓に比べて体格も退化してるしな」
と投稿しました。
この「汚い手段」という表現に、バスケットボールファンなどから反論が続出。
いったい動画では何が起きていたのでしょうか。
町山氏が問題視したプレーは本当に「汚い手段」といえるのか、バスケットボールのルールとともに検証してみました。
町山智浩が日本代表に「汚い手段」と投稿
町山智浩氏が引用したのは、韓国のユーザーが投稿した約4秒間の動画です。
アジア大会バスケ、日本はありとあらゆる汚い手段を使って妨害しただけじゃなくて、試合中もここまでやって負けたのか。中韓に比べて体格も退化してるしな https://t.co/uHQBpdyRGI
— 町山智浩 (@TomoMachi) September 20, 2026
映像では韓国代表の選手がボールを保持。
その選手に対して日本代表の2人が左右からプレッシャーをかけ、サイドライン付近へ追い込むような形になっています。
元の韓国語投稿では、2人で壁際に追い込むプレーに不満を示す趣旨のコメントが添えられていました。
これを引用した町山氏は、日本代表が「ありとあらゆる汚い手段」を使ったと表現。
さらに「中韓に比べて体格も退化してる」と日本代表の体格にも言及しました。
この投稿は拡散され、X上で議論となっています。
Xでは「普通のディフェンスでは?」と反論相次ぐ
町山氏の投稿に対して目立つのが、プレーそのものへの反論です。
Xでは、
「ボールを奪おうとしてディフェンスしているだけ」
「ダブルチームは普通の戦術」
「相手のシリンダーを侵していなければ問題ない」
などの趣旨の投稿が見られます。
一方で動画を見ると、日本の選手と韓国の選手との間には激しい身体接触があるようにも見えます。
「日本の31番が押しているように見える」
という指摘もあり、町山氏への反論一色というわけではありません。
では、ルール上はどう考えればいいのでしょうか。
2人で1人を囲むのは反則なの?
ダブルチームでエンドラインに追い込むプレーなんてバスケじゃ日常茶飯事というか、基本中の基本プレーでしかないんだけど、汚い日本人にやられる韓国人という自身の描きたい結論からしか思考ができないので、こういう陰謀論をすぐに言い始める。
— れじみ (@rejimi31) September 21, 2026
結論からいうと、
2人のディフェンダーが1人のボール保持者を囲むこと自体は反則ではありません。
バスケットボールでは一般的に「ダブルチーム」と呼ばれる守備方法があります。
さらにサイドラインやコーナーなど、ボール保持者が逃げられる方向が限られる場所へ追い込み、複数の選手でプレッシャーをかける守備は「トラップ」と呼ばれることもあります。
相手に難しいパスを出させたり、ボールを奪ったり、ターンオーバーを誘発したりするために使われる戦術です。
したがって、
「2対1で囲んだから汚いプレー」
とはいえません。
問題になるのは、その際にどのような身体接触があったかです。
押したらファウルになる可能性
FIBAの公式ルールでは、相手に対する違法な身体接触はパーソナルファウルになります。
また「シリンダー・プリンシプル」という考え方があります。

簡単にいえば、選手には自分が正当に占めている一定の空間が認められており、相手の空間へ不当に入り込んで接触すればファウルになる場合があります。
そのため、
「ダブルチームをした」
こと自体と、
「身体を使って相手を不当に押した」
ことは分けて考えなければなりません。
前者は一般的な戦術。
後者は程度や状況によってファウルとなります。
動画のプレーは結局「汚い」の?
我が国の代表がベストキッドのコブラ会みたいな卑劣な方法で国際試合をするほどに精神的に落ちぶれてしまったの本当に哀しい https://t.co/IYgWya63cE
— きゃとらん (@sp284) September 20, 2026
今回の約4秒の映像だけから、
「完全に合法なプレーだった」
あるいは逆に、
「日本が意図的に汚いプレーをした」
とまで断定するのは難しいでしょう。
確実にいえるのは、2人でボール保持者をサイドライン付近へ追い込む戦術そのものは、バスケットボールで禁止されているわけではないということです。
映像では身体接触も発生しているため、その接触については審判がルールに基づいて判断することになります。
つまり、
「2人で囲んでいる映像=日本が汚い手段を使った証拠」
と解釈するのは早計といえそうです。
町山氏の投稿は、ルール上の判定そのものというより、映像を見た本人によるプレーへの評価と捉えるのが適切でしょう。
そもそも日本は「汚い手段」で決勝まで来た?
町山氏の投稿では、
「ありとあらゆる汚い手段を使って妨害した」
という非常に強い表現が使われています。
しかし今回確認した日本オリンピック委員会や主要スポーツメディアの大会報道では、日本代表が大会を通して不正・悪質なプレーを繰り返していたとする事実は確認できませんでした。
もちろんバスケットボールは接触のあるスポーツであり、試合中には日本にも韓国にもファウルが発生します。
ファウルがあったことと、チームとして「汚い手段」を使っていたという評価は同じではありません。
少なくとも今回確認できた情報から、町山氏の「ありとあらゆる汚い手段」という表現を客観的事実として裏付けることは難しそうです。
日本は本当に「体格も退化」している?
町山氏はさらに、
「中韓に比べて体格も退化してる」
とも投稿しています。
こちらも注意が必要です。
今回の日本代表は若手主体のチームで、大会で通常のフル代表と同じメンバーがそろっていたわけではありません。
さらに「体格が退化した」というのであれば、過去と現在の代表選手の平均身長や体重などを同じ条件で比較する必要があります。
今回の投稿では、その根拠となるデータは示されていません。
したがって、この部分についても客観的なデータに基づく分析というより、町山氏個人の印象・評価とみるのが妥当でしょう。
町山智浩にバスケ経験はある?
ボール持ってる選手から奪おうとディフェンスしてるだけ。汚くも何もない、戦術の一つ。それを汚い手段だの言われるのは心外である。あとファール吹かれてるからな。そのへんちゃんと見て物申せよ https://t.co/WwDrV9zstl
— ダッツ (@kazif0903) September 20, 2026
今回の投稿を受け、Xでは、
「町山さんはバスケットに詳しくないのでは?」
という声も出ています。
そこで町山氏の経歴を調べました。
町山智浩氏は1962年東京都生まれ。
早稲田大学法学部を卒業後、宝島社で編集者として活動し、1995年には雑誌「映画秘宝」の創刊に携わりました。
その後アメリカへ移住し、映画評論家・コラムニスト・ジャーナリストとして活動しています。
映画評論だけでなく、アメリカの社会・文化などについても数多く発信しています。
一方、出版社などが公開している町山氏の主要なプロフィールを確認した限り、
・バスケットボール選手
・バスケットボール指導者
・審判
・バスケットボール専門記者
などとして活動した経歴は確認できませんでした。
したがって、少なくとも公表されている経歴から「バスケットボールの専門家」と位置付けることは難しそうです。
ただしバスケにまったく知識がないわけではない
一方、
「町山氏はバスケを何も知らない」
とまで断定するのも正確ではありません。
町山氏は2023年、ナイキがマイケル・ジョーダンと契約するまでを描いた映画「AIR/エア」を紹介した際、NBAや1980年代のバスケットボール、シカゴ・ブルズ、ジョーダンとナイキの関係などについて詳しく解説しています。
本人も1962年生まれで、マイケル・ジョーダンと同世代であることに触れていました。
アメリカ在住歴も長く、NBAを含む米国のスポーツ文化に触れる機会は少なくないと考えられます。
ただし、
NBAやバスケットボール文化について知識があることと、競技ルールや審判基準を専門的に解説できることは別
です。
今回確認できた範囲では、町山氏に競技バスケットボールの専門的な資格や経歴があることまでは確認できませんでした。
日本は韓国に57-67で敗れ銀メダル
肝心の試合は、日本が韓国に57-67で敗れました。
前半は28-28。
日本は第1クォーターを16-12とリードするなど韓国と互角に戦いましたが、第3クォーターに韓国が27得点を挙げてリード。
最終的に10点差で韓国が勝利しました。
韓国ではイ・ヒョンジュン選手が27得点、18リバウンドと圧倒的な活躍を見せています。
日本は金メダルには届かなかったものの、1962年ジャカルタ大会以来64年ぶりとなる銀メダルを獲得しました。
韓国代表も大会運営のトラブルに遭っていた
なお、今回の試合とは直接別の問題ですが、韓国代表は決勝当日の午前中に予定していた練習を行えないトラブルにも見舞われています。
韓国の聯合ニュースによると、練習会場へ向かうための送迎車両が予定時刻になっても来ず、韓国代表は決勝前のシュート練習などを中止せざるを得なかったとされています。
日本との決勝前に韓国男子バスケ練習中止 送迎バス来ず「意図的な妨害も疑わざるを得ない」https://t.co/A9Sm8sTZpz
— 産経ニュース (@Sankei_news) September 20, 2026
報道によると、韓国チームは20日午前にシュート練習などで調整する予定だったが、午前10時台に来る予定だった車両が現れなかった。韓国選手団が大会組織委員会などに抗議する予定。
今大会では他競技でも輸送や宿泊をめぐる問題が報じられています。
ただし、この大会運営上の問題と、日本代表の試合中のプレーが反則だったかどうかは別々に考える必要があります。
まとめ
今回は、愛知・名古屋アジア大会男子バスケットボール決勝後に話題となった町山智浩氏の投稿について調べました。
町山氏は韓国ユーザーが投稿した映像を引用し、日本代表について「ありとあらゆる汚い手段を使って妨害」「試合中もここまでやって負けた」と投稿。
これに対しXでは「普通のディフェンス」「ダブルチームは戦術の一つ」などの反論が相次ぎました。
バスケットボールのルールを確認すると、2人で1人のボール保持者を囲むダブルチームやトラップそのものは禁止されていません。
一方、相手を押したり、正当な空間を侵して不正な身体接触を起こしたりすればファウルと



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