X(旧Twitter)で、陸上競技のレース中にNHKのカメラクルーとみられるスタッフがトラックに入り、走っている選手の進路をふさぐ映像が大きな注目を集めています。
投稿には、
「妨害するNHKのカメラクルー。高い給料貰ってやってることがこれ。もう解体しろ!」
との厳しい言葉も。
映像だけを見ると、レース中の選手たちの前をカメラクルーが横切っているように見え、
「これはいつの大会?」
「選手は大丈夫だったの?」
「なぜカメラマンがコースに入った?」
と疑問に思った人も多いようです。
調べてみると、この映像は最近起きた事故ではありません。
2022年5月7日に東京・国立競技場で行われた「第106回日本陸上競技選手権大会・10000m」で実際に発生した事故でした。日本陸連も公式に事故の詳細を発表しています。
今回は、何が起きたのか、被害に遭った選手は誰だったのか、なぜカメラクルーがトラックに入ったのか、その後NHKはどのように対応したのかを詳しく調べました。
Xで話題のNHKカメラクルーの映像はいつ?
妨害するNHKのカメラクルー。高い給料貰ってやってることがこれ。
— あーぁ (@sxzBST) August 20, 2026
もう解体しろ! pic.twitter.com/k0lbMSx4rJ
結論からいうと、問題の事故が発生したのは、
2022年5月7日(土)
です。
場所は東京・国立競技場。
大会は、
第106回日本陸上競技選手権大会・10000m
でした。
この大会は同年7月に米国オレゴン州で行われた世界陸上の日本代表選考競技会も兼ねていました。
つまり、2026年8月に新たに発生した事故ではありません。
約4年前の映像が2026年になってXで再び拡散され、大きな注目を集めている
というのが正確です。
何のレースで事故が起きた?
問題が発生したのは、男子10000mのタイムレース2組目です。
このレースでは旭化成の相澤晃選手が27分42秒85でトップフィニッシュし、2年ぶり2度目の日本選手権優勝を果たしました。
ところが問題は、上位選手がゴールしたその後に発生します。
10000mという長距離レースのため、先頭集団がフィニッシュした時点でも、まだ走っている選手がいました。
ここが今回の事故を理解するうえで非常に重要なポイントです。
なぜNHKのカメラクルーはトラックに入った?
日本陸連の公式発表によると、レース終盤、上位選手がフィニッシュした後に、テレビ中継を担当していたNHKの撮影要員2人が第1曲走路でトラックの内側から外側へ移動しようとしました。
2人のうち、
1人がカメラを担当し、もう1人がアンテナを持っていました。
そして、このカメラとアンテナがケーブルでつながれていたのです。
上位選手がゴールしたことでレースが終わったように感じたのかもしれませんが、実際にはまだ多くの選手が走っていました。
その状態でカメラクルーがトラックへ進入。
これが事故につながりました。
カメラケーブルが三田眞司選手の首に引っかかった
映像で見える「進路妨害」だけが問題だったわけではありません。
さらに危険な事故が、その直前に起きていました。
トラックに入ったカメラマンとアンテナを持ったスタッフの間にはケーブルがあり、それが走路を横切るような状態になりました。
そこへ走ってきたのが、サンベルクス所属の三田眞司選手。
日本陸連によると、三田選手はこのとき9600mを過ぎた地点を走っていました。
つまり10000mのゴールまで、あと400mほど。
ところが、
カメラとアンテナをつないでいたケーブルが三田選手の首にかかる形で接触した
のです。
三田選手は数秒間その場で止まり、体をひねるような状態になりました。
それでもレースに復帰し、そのままフィニッシュしています。
さらに後続4選手の進路もふさいだ
事故はこれだけでは終わりませんでした。
三田選手との接触後、カメラクルー2人は慌ててトラックの内側へ戻ろうとします。
しかし、そこへさらに後続の選手が走ってきました。
日本陸連が名前を公表しているのは、
- 川瀬翔矢選手(Honda)
- 相葉直紀選手(中電工)
- 川田裕也選手(SUBARU)
- 細森大輔選手(YKK)
の4人です。
4選手はカメラクルーとの接触を避けるため、減速したり進路を変更したりすることを余儀なくされました。
幸い4選手との直接の接触はなく、そのままレースを続けています。
現在Xで拡散されている映像で、選手たちがカメラクルーを避けるように走っているのは、この場面とみられます。
三田眞司選手は負傷して病院を受診
「接触したけれど大したことはなかった」という事故でもありませんでした。
三田選手はレース後、首が赤く腫れて痛みを訴えたと報じられています。
その日のうちに東京都内の病院を受診。
診察とレントゲン検査では異常は確認されなかったものの、痛みが続いていたため静養し、さらに詳しい検査を受ける予定とされました。
一方、接触を回避した後続4選手については、日本陸連が各所属先に確認したところ、体調への影響はなかったとされています。
NHKカメラマンはなぜ安全確認をしなかった?
事故直後には詳しい原因が分かっていませんでした。
しかし、その後NHKが調査。
5月18日のNHKメディア総局長会見で、さらに具体的な経緯が明らかになっています。
NHKによると、事故が発生したのは午後8時50分ごろ。
第1コーナー内側からトップ選手のゴールを撮影していたワイヤレスカメラ担当者が、
安全を十分に確認しないままトラックを横断しようとした
ことが事故につながりました。
さらにカメラマンは、一緒に行動していた送信機担当の補助スタッフに声をかけずに横断を開始したと説明されています。
その結果、2人を結ぶケーブルが走路上に張られる形になったわけです。
カメラマンはNHK職員だった?
ここもXの投稿を見る際には注意が必要です。
事故を起こした撮影スタッフについて、当時NHKは、
NHKから委託された外部プロダクションのスタッフ
だったと説明しています。
そのため、「NHK職員のカメラマンがやった」と断定するのは正確ではありません。
一方で、中継そのものを担当していたのはNHKです。
NHK側も事故について責任を認めています。
当時の前田晃伸NHK会長も、
「放送を担当した放送局としてあってはならないこと」
として謝罪しました。
つまり、
実際に撮影していたのは委託先スタッフだが、中継の安全管理を含めNHKが責任を認めて謝罪した
と整理するのが適切でしょう。
当時炎上したNHKの会見はこちらhttps://t.co/LkttrnssvK
— 白蛇くん (@kait_spendlove) August 20, 2026
接触後もカメラクルーは撮影を続けていた
さらに問題視されたのが、事故発生後の対応です。
NHKが後日明らかにしたところによると、本来であれば事故直後に撮影を中断し、
選手の負傷状況を確認する
↓
選手に謝罪する
↓
大会主催者やNHKの現場責任者へ報告する
必要がありました。
しかし、三田選手が再び走り始めたため、スタッフは大丈夫だと思い込み、そのまま撮影を続けたとされています。
さらに、接触事故がNHKの現場責任者に伝えられたのは放送終了後でした。
NHKは安全確認だけでなく、事故発生後の対応にも問題があったことを認めています。
「陸上撮影経験者」だったがトラック横断経験はなかった
事故に関わったスタッフについては、当初「陸上を含めスポーツ中継の経験者」と説明されていました。
しかし、その後の調査では、カメラマンは20代で、トラックを横断した経験はなかったことも明らかになっています。
加えてNHKは、チーフプロデューサーやディレクターらが事前に、
「どのようにトラックを横断するのか」
「いつ横断してよいのか」
といった具体的な安全指示を十分に行っていなかったと説明しました。
つまり、単純な「カメラマン個人の不注意」だけではなく、中継チーム全体の安全管理にも問題があったと考えるべき事故だったようです。
日本陸連も「あってはならない」と謝罪
責任を認めたのはNHKだけではありません。
大会を主催した日本陸連も、
「このような事態はあってはならない」
として、三田選手、接触しそうになった4選手、所属先や家族などに謝罪しています。
さらに日本陸連は、NHKとの間で撮影時の安全管理について申し合わせを行っていたものの、
その内容が十分ではなかったことも事故の一因
だったと認めました。
その後、競技者の安全を最優先するため、取材に関する新たなルール作りなどを検討すると発表しています。
なぜ2026年になって再び炎上している?
今回興味深いのは、事故から約4年が経過した2026年8月になって再び映像が拡散していることです。
今回提示されたX投稿は、2026年8月時点で表示数が大きく伸び、多数のリポストや「いいね」が付いています。
ただ、投稿文だけでは事故の日付や大会名が説明されていません。
そのため映像を初めて見た人の中には、
「最近NHKが起こした事故」
だと受け取った人もいるかもしれません。
しかし、実際には2022年5月7日の映像です。
ここは今回の記事で最も明確にしておきたいところでしょう。
また、X投稿にはNHKそのものへの強い批判もありますが、事実関係として確認できるのは、
NHKの中継スタッフが競技中の走路へ進入したこと、ケーブルが選手の首に接触したこと、後続4選手にも影響が出たこと、NHKと日本陸連が責任を認めて謝罪したこと
までです。
現在拡散されている投稿への評価と、2022年に実際に起きた事故の事実関係は分けて考える必要があります。
まとめ
Xで再び話題となっている「NHKカメラクルーが陸上選手を妨害した」とされる映像について調べました。
映像は2026年のものではなく、2022年5月7日に東京・国立競技場で開催された第106回日本陸上競技選手権大会・10000mの男子10000m2組で起きた事故です。
上位選手がフィニッシュした後、まだレースを続けている選手がいるにもかかわらず、NHKの中継を担当する撮影スタッフ2人がトラックを横断しようとしました。
その際、カメラとアンテナをつないでいたケーブルが、残り約400mを走っていた三田眞司選手の首に接触。
三田選手はレースを続けてゴールしましたが、首の腫れや痛みを訴えて病院を受診しています。
さらに、
川瀬翔矢選手、相葉直紀選手、川田裕也選手、細森大輔選手
の4人もカメラクルーを避けるため、減速や進路変更を余儀なくされました。
NHKは後日の調査で、カメラマンが十分な安全確認をせずトラックを横断し、補助スタッフへの声掛けも行っていなかったことなどを明らかにしています。
NHK、日本陸連ともに事故について謝罪し、再発防止策を打ち出しました。
2026年になって再び映像が注目されていますが、今回初めて起きた出来事ではありません。
ただ、競技中の選手の首にケーブルが引っかかるという、一歩間違えればさらに重大な事故につながりかねない出来事だったことは間違いなく、4年後の現在でも映像を見た人に強い衝撃を与えているようです。



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